「私の頭の中を覗いてほしい!」共有できるセルフケアアプリ「Focus on」に込めた過去の自分とこれからの子どもたちへの想い
一口に「発達障害」と言ってもその特性はさまざま。しかし、ほとんどの人たちに共通するのが「普通でいることをがんばっている」ことではないでしょうか。それでも「思いが伝わらない」「がんばっているのにうまくできない」「疲れているのか、わからない」そんな当事者の声をよく聞きます。今回ご紹介するセルフケアアプリ「Focus on」は、そんな見えない困り事や自分の状態を信頼できる他者へと共有することで、自分が頑張るだけではなく、みんなでケアし合いながら学校生活や日常生活を送れるようになることを目指すアプリです。
自身も不登校や見えない困り事に悩まされた経験を持つ開発者で一般社団法人Focus on 代表理事の森本陽加里さんに、このアプリの開発のきっかけや、「発達障害向けアプリ」とはしなかった理由、今後の展望についてお聞きしました。
《プロフィール》
森本 陽加里(もりもとひかり)
一般社団法人Focus on代表理事/立命館大学 産業社会学部 3回生
自身が通常学級に在籍する 発達障害児で、2度の不登校経験から、発達障害児にとって学校をより選択しやすい学びの場にしたいと考え、学校内で発達障害児一人一人に合った支援を実現するアプリ「Focus on」を考案。第7回高校生ビジネスプラングランプリにて審査員特別賞受賞。
公式サイト:https://focuson-app.com/
Twitter:https://twitter.com/hikari_focuson
一番近くにいる支援者とも共有できない経験がきっかけ
Ledesone:「Focus on」はどのようなアプリサービスなのか教えていただけますか?
森本:「Focus on」は「共有するセルフケアアプリ」として開発中のスマホアプリで、現在はベータ版の検証を行っています。2024年2月までにリリースする予定です。
具体的な内容は、発達障害の方や見えない困り事を持っている方たちが、困り事や疲れなどを入力し、それがアプリの中で可視化されます。その情報を安心できる相手、たとえば保護者や学校の先生などに自分の状態や困り事の情報を共有することによって、適切な理解や支援につなげていくことを目指しています。
Ledesone:自分自身もそうですが、感情の可視化というのは結構難しいのではないかと思います。特に発達障害の方や、見えない困り事を持っている方たちはそれゆえの、言語化のしづらさがあります。また、言語化できてたとしても環境によっては「そんなに困っているように見えない」と言われてしまったりすることもあるかと思います。
そんな中で、森本さんが「可視化」という部分に着目した理由や、きっかけについてお聞かせいただけますか?
森本:私がこのアプリを作り始めた理由は、私自身が発達障害当事者で、まさに困り事をもっていたことです。小さい頃は母が私の困り事を一番近くで見て、学校に伝えてくれる通訳のような役割をしてくれました。しかし母が私に「これ困ってるよね」と言うことと、私自身が「困っている」と感じることは必ずしも一致しなかったり、認識の違いがあったりしていました。 だから「可視化」に至る前に私が本当に望んでいたのは「私の頭の中を覗いてほしい」ということでした。「私が見ているものをそのまま見てくれたら早いのに!」と思っていました(笑)
キーワードは「可視化」。受け取る側もわかりやすい情報に
森本:ではそれをどうやったら知ってもらえるかと考えた時に、情報を受け取る相手側が受け取りやすい情報でないと理解してもらえないということに、高校生ぐらいで気が付いたんです。
そこからアプリを作る流れにつながるのですが、その中に「可視化」というキーワードがありました。本人の言葉がそのまま届くように「言語化」することや、感情や疲れがグラフで分かること、アプリの中で「しきい値」を作ってそれを超えたらアラートを出すなど、受け取る側が受け取りやすい情報のかたちを考えた時に「可視化」や「言語化」が近いのではないかと考えました。
Ledesone:学校現場でも使えそうですよね。先生が生徒の困り事を把握して「今、休んだほうがいい」とか使えたらいいのではないでしょうか。
森本:そうです。私自身が「学校へ行きたかったけど行き続けられなかった」というところからスタートしているので、ぜひ学校の中でも使ってほしいですね。あと、私の原体験として家族の存在も大きかったので、ご家族の中で使ってもらえることが最初のステップだと考えています。
現在まだベータ版ですが、私立の学校1校とB型就労支援事業所が1ヶ所使ってくださっています。私の個人的な原体験や意向としては学校や家庭にこだわりはありますが、一方でアプリ自体の活用は事業所や一般の社会人の方々にも使っていっていただけるのではないかと考えています。
当事者の声をフィードバックに反映
Ledesone:今、学校というお話があったかと思いますが、学校や生徒と一緒に開発していく上で学びや難しさなどはありましたか?
森本:私が「Focus on」を最初に立案したのは高校2年生のときでした。今、私は大学3年生(インタビュー時)なので4、5年くらい検証しては直して…をずっとやっているんですが、開発当初からずっとヒアリングやフィードバックをくれる高校生の当事者の子たちがいます。そこから今回の検証で増えた高校生や当事者の方もいらっしゃるので、わりと当事者の声を聞く機会は多いのかなと思っています。
難しかった点や気付きとしては、アプリの画面のデザインを作った時に、最初は日記のイメージで紙に書くUIで進めていたんです。でも「その形だと学校を連想させてつらくなる」「LDの子や学校に不安感を持っている子達には合わないのではないか」と言われてハッとしました。あとは「この白はちょっとキツイ」とか「グラフだと読み方がわからないから、視覚的に直感で分かる表示にしてほしい」など、当事者の目線として機能だけではなく、色味や視覚的なデザインを取り入れて進めています。
その代表的な例として、疲れ度の計測メーターは最初はグラフだったものを、水が溜まっていって水位が上がっていくような表示形式に変更しました。たしかにそのほうが、見て直感的にわかりやすいですよね。このようにユーザーの声を聞いて反映しています。
Ledesone:その疲れ度は、誰がどのように判断して数値が溜まっていくような仕組みなんでしょうか?
森本 このアプリには朝・晩1回ずつ「チェックイン/チェックアウト」として疲れを5段階で選択する機能があります。それをアプリ内で計算しています。それがある一定の条件になるとアラートが出て、本人や親、支援者などへも通知を届けることができます。
実はアルファ版の際には、ユーザー側には入力機能しかありませんでした。こちらのメンバーがユーザーの動向を観察して「ちょっとやばいかも」と思ったらアラートを出す仕組みで。その中でユーザーの方々にアラートのタイミングの良し悪しをフィードバックいただき、その結果を分析して計算式を算出し、それをベータ版に活用しています。
Ledesone:いま企業でのメンタルヘルスチェックにも関心が高まっているので、一般企業向けにもすごくいい気がしますね。
つらかったからこそ「自分たちが使えるもの」を
Ledesone:先程のお話の中で、学校に対してのこだわりがあるとおっしゃっていましたが、その理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
森本: 私自身に学校に行きたかったけれど行けなかったという強い原体験があります。学校の中で当たり前に過ごしている友達がすごく羨ましく見えていて…。でも、私が毎日行き続けられるのかというと、どうしても疲れてしまって2日に1度は休んでしまい、そうするとズルズルと行けなくなってしまう。なので、過去の自分のために作りたいという気持ちがありました。
私が一番しんどかった時期は小学3年生の時なんですが、その一番もがいていた頃の私には、当時すがれるものが何もありませんでした。その頃にも保護者向けのサービスや、学校の先生向けのツールなどはおそらくあったと思いますが、当事者自身が自分のためになにかできるサービスやツールが、私の知っている限りでは無かった。
この体験から「自分たちが使えるもの」「過去の自分が使えたらよかったもの」が起点としてあります。ですので、学校や学生の子に使ってほしいというのが一番のこだわりなのかなと思っています。
ただ、一方で今のアプリは文章記入がメインなので、高校生や中学生で言語化が得意なタイプの子たちに使ってもらうのが一番フィットしていると思います。そのため中学生や高校生むけに、と言っていますね。
全国どこにいても「学校に行きたい」と思ったら通い続けられる未来へ
Ledesone:以前、別のインタビュー記事で拝見したのですが、最初はアプリではなく不登校や発達障害当事者向けの学校を作りたかったとおっしゃられていましたよね。そこからアプリ開発へ転じたのはなぜですか?
森本:ちょうど高校生の頃に、「自分が明日学校へ行けるかどうか」ではなく、「過去の自分を救いたい」とか、「過去の自分のためになにかしたい」、「自分に似たような境遇の子のためになにかしたい」と、自分の意識のベクトルが外に向き始めたんです。そこで「みんなが通いやすい学校を建てよう」と考えたんですが、学校には定員があってその枠に入れる子じゃないと通うことができない、さらに、その学校に通える距離にいないと来ることもできないということに気が付きました。
私はその子自身が日本全国のどこにいても、どんな人が周りにいても学校に行きたいと思ったら通い続けられるような未来にしたい。つまり、学校ひとつ作るだけじゃ足りないと思ったんですね。日本全国どこにいても、どんな先生がいたとしても、誰と一緒にいても、その子達が学校に行きたいと思った時に自分に合った環境を作ることができる。そんなツールやサービスを作っていきたいと考えた時に、スマホだったらみんな持っているし、使いやすいということでアプリになりました。
Ledesone:もともとプログラミングやアプリ開発などに携わられていたのですか?
森本:いやいや、全然!今も作れないままです。高校生のときはずっとプログラマーを探していて、友人の起業家に教えてもらったプログラミング教室の合宿で宣伝したりスカウトしたり…そこで興味を持った子たちに入ってきてもらったりしています。
Ledesone:チームメンバーの年齢層は同世代が中心ですか?
森本:そうですね、同年代が多くてあとはプラスアルファとして私の所属大学の教授などにもご協力いただいてフィードバックやアドバイスをいただいています。
とにかく口に出すことと真剣に考えること
Ledesone:いろいろな人にフィードバックをもらおうと思ったきっかけは?
森本:一番最初のきっかけは、高校生の時に「こんなものがあれば学校に行けたかもしれない」というものを、ドラえもんの道具のようなイメージでひたすら考えて書き起こしていたんですね。それを友人に見せたら「いろいろな人にみせてみたら」と言われたことです。
そこから、私自身が小学生の頃から所属している愛知県の発達障害の支援団体「アスペ・エルデの会」の代表、辻井 正次 中京大学教授に見せて…というのがいろいろな人に自分のアイデアを共有したり、フィードバックを頂いたりという活動の最初のところです。
Ledesone:この記事を読んでいらっしゃる人たちの中にもアイデアはあるけどなかなか行動できない、どうしたらいいかわからないという方も大勢いらっしゃると思います。
そういう方たちに森本さんはどういうアクションをしたらいいというアドバイスを送りますか?
森本:とにかく口に出すことと、真剣に考えること。私の場合、ある種シングルフォーカスだったので、「できる/できない」の話じゃなかったんですよ。「やりたい!」ということで頭の中がパンパンになっちゃうというか。それこそ「学校を作りたい」と思ったときもいろいろな人に聞きまくって、イベントや話をしに行って、とにかく身近な友達でも、学校の先生でも保護者でも引き下がらないで、情報を絞り出してもらうことをやっていました。
そうやって真剣に考え続けたから学校づくりに関しては「あ、それじゃだめだ」と思えました。
ですので、とにかく口に出してみるということと、仮の設定でも信じて本気でやるということが最初にやっていたことです。
自分が苦しみ、解決したいと思ったことは、評価されるためではない
Ledesone:とにかく大勢の人にアイデアの共有をし、そこについてきてくれた人たちと一緒に和を広げていく感じですね。これまでさまざまな場所でプレゼンやコンテスト出場などされていたと思いますが、審査員からのフィードバックで印象的なものや、その中で学んだことや感じたことなどはありますか?
森本:私が一番最初に出場した大きな大会は、日本政策金融公庫の高校生ビジネスプラングランプリでした。その時のファイナリストたちの多くは、学校の授業の一環としてやっている子達だったんですね。私のように原体験があってとか、この課題を解決したくてという子たちは少なかった。ですので、いろいろな方から私の原体験を話せばいいところまで行くんじゃないか、というフィードバックを多くいただきました。
ですが、私は自分が苦しんでいて自分のためにやりたかったことというのは、別に評価されるためにやっていたわけではない。なので逆に言いたくなくなってしまったんです。こんなところで天邪鬼な性格が出てしまったり(笑)また、大会に出る前までは学校でも発達障害の話は一切隠していたので、そういった公の場で自分が当事者であることを話しながらプレゼンすることが、自分の中では大きなハードルでした。
そこからいろいろと鑑みていく中で「当事者の声が良いと言われる時代の中で、必要以上に評価されてしまうことはある。けれどもやはり自分が発達障害で苦しんできたからこそやりたい活動なので、そんな自分に嘘をつきたくない」という理由でカミングアウトしました。
そこが自分の中では周囲のフィードバックと、今後得ていきたい評価と、自分の気持ちの葛藤があったところです。
あとは、審査員のフィードバックというよりは、発表を聞いてくれていた方からのフィードバックのエピソードになりますが、実は私は正直発表するまでは「私だけの課題に誰が興味あるんだろう」と思っていました(笑)。困り事が親に伝わらないとか、先生に伝わらないことってどこまでみんなわかるんだろうと思いながらしゃべっていたんですが、発表が終わった後に当時高校生の同い年の子が、すごい涙ながらに「めちゃめちゃ良かった」と言ってくれたんです。その子の妹が発達障害を持っていて、私の発表が「すごく課題がわかる」と、「本当にほしい」と言ってもらえました。それまでは「私がほしい」とだけ思っていたのですが、他の人にも「ほしい」と思ってもらえるんだと。それは、自分だけのためにということから、もうちょっと外への矢印が強く向いた瞬間でした。
発達障害という言葉について
Ledesone:「Focus on」のクラウドファンディングのサイトに書いてあって、すごく共感した部分が、「なぜ発達障害という言葉を濁すようになったか」というところです。
僕自身も当初は「発達障害」という言葉を使っていたけれど、最近はあまり「障害」という言葉を積極的に使うことが好きではなくなってきていて。Ledesoneもいろいろな見えづらい困り事を解決するために、さまざまな企業と一緒に活動を行っているのですが、でも周りから「見えづらい困り事ってなんやねん」みたいな感じで言われたりすることもまだまだ、というか、結構ある。最近だったら認知や学習、コミュニケーションに関する困り事などをふくめていくと、さらに高次脳機能障害や軽度の認知症という形でさらに幅が広がったりします。
森本さんが「発達障害という言葉を濁すようになった」理由を詳しく教えていただいてもいいですか?
森本:この活動を始めた当初は私も「発達障害」という言葉をすごく使っていたし、発達障害について自分も知りたいという思いもあったので、どちらかというと好んで使っていました。ただ、学校と連携してアプリの開発していくうちに「発達障害と言わないでほしい」「まだ本人や周りが認知していない、受け止めきれていないことがあるので、その言葉をできるだけ濁してほしい」という要望をいただくことが幾度かありました。
また、一緒に開発をしていく中で、来てくれる子達が発達障害ではないけれど、私達が解決したい課題を同じように持っていることがわかりました。例えば、疲れがわからないとか、しんどいことが表面化してこないから「まだ頑張れる」「もうちょっとだから頑張りなよ」と言われて休めずにポキっと折れちゃう。そういった課題を解決したいと思った時に、発達障害だけじゃなくてもそういう状態になる子たちはいますよね。ですので、今開発しているアプリが発達障害の子たちだけにしか使えないものになったら、すごくもったいないし、そうはしたくない。
さらに「発達障害の方のためのアプリ」としてしまうと、アプリを使う=発達障害になってしまう。私も高校のコンテストで発表するまでは隠していたので、もし限定してしまうと当時の高校生の私も絶対使えなかっただろうと思いました。それでは本末転倒ですし、このアプリは誰のためにあるんだろう?ということを考えた末に、発達障害という言葉を濁すようになりました。
「”普通”を頑張る人たち」とクラウドファンディングの見出しにあるのですが、これはどういう言い方であれば当事者の方が聞いた時に「あ、これ私のことだ」と感じてくれるんだろうかと考えてつけました。世間の大多数の方たちの共感よりも、パッと見たときに「これは私だ」と当事者の方たちのアンテナに引っかかって欲しくて試行錯誤した結果、この言葉になりました。
可視化することで、受け取る側の解釈の精度を上げることができる
Ledesone:それでは「Focus on」の今後の展開やご自身の今後の展望について教えていただけますか?
森本:アプリ自体はいろいろな軸で展開していく予定です。まずは、アプリを広めるという観点で学校と家庭に広めていきたいのが一番最初にあります。その後が、大学生、企業などに広げていきたい。
また、アプリは現在わりとセルフケアアプリの部分が大きいので、よりゲーミフィケーションというか、楽しく続けられるようにしたいと考えています。今は家族や先生のような安心できる大人、いわゆる支援者の人たちにつながることを前提としていますが、それだけではなく友達同士で繋がれるような機能ができたらいいのではないかと考えています。「最近しんどそうだな」「落ち込んでるみたいだからカフェに誘ってみようかな」とか、コミュニケーションができる機能を楽しい方向でつけていけたらいいなと。
今後の一番の展開としては、今の機能は中高生以上をメインターゲットにした機能になっていますが、それを小学生以下にも使えるようなものにしていきたいです。また、現在の機能はアラートが出て大人が介入して休ませるという形になっているのですが、それはギリギリのところでセーフティネットを発動させ、折れないようにドロップ・アウトしないようにサポートするという文脈が強い。
そうではなくて、そもそも疲れづらい環境や、その子にあった支援をしていくにはどうしたらいいかというところに今後は手を伸ばしていきたいです。当事者の困り事ベースで、こういう支援があったらいい、こういうサポートがあったらいい、こういうことを知っておいてほしいということが伝わるカルテ機能や困り事の取説のような機能を今後増やしていきたいと考えています。
実は今、すでにこちらの開発も進んでいて、所属大学の教授と質問内容の妥当性、信頼性の検証などをやっているところです。特徴として、例えば質問項目はこだわりの有無だけではなく、その程度も記載できるようにすることを予定しています。これまではどちらかというとこだわりが「ある・ない」だけで記載する事が多かったのですが、そうすると解釈や配慮の方法はサポート側に一任されてしまっていました。しかし、程度やパターンを詳細に記載することで、そのこだわりをずっと持っていなくてはいけないのか、どういう時に必要なのか、どんな傾向があるのかという程度を可視化することができる。そうすると、どのようなサポートができるかという解釈の精度が上がると思うんです。
「折り合いをつける」ことでそれぞれが心地よく過ごせる社会を
Ledesone:では最後に、弊社のミッションが「ひとりひとりが過ごしやすい社会をともにつくる」というものなのですが、森本さんが考える「ひとりひとりが過ごしやすい社会」とはどんな社会でしょうか?
森本:私にとって「折り合いをつける」という言葉が昔からのキーワードでした。母や先生などに支援してもらうときも「折り合いをつけていこう」と声をかけられることがすごく多くて。「私は発達障害でしんどいことが多いので、全部相手側が我慢したり受容をするべき!」ではなく、お互いが歩み寄れる場所を探すことが大切ですよね。
「Focus on」は一番最初に「私の頭を覗いてほしい」という思いから始まっているので、相手の世界を覗くような感覚で理解しよう、知ろうとできるというところを目指しています。
一生懸命相手の世界を知ろうとした上で折り合いをつけていくことができれば、お互いにとってちょうどいい距離感が、人と人の間で作れるのではないかと思います。ですので、対話を通して折り合いをつけられる状態が、それぞれが心地よく過ごせる社会なのかなと思います。
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