参加者・運営と振り返るハッタツソン2022


Ledesone(レデソン)では、2019年から毎年、発達障害のある当事者との対話からサービスや仕組みを考えつくる共創プログラム「ハッタツソン」を開催しています。

今回は、2022年に開催された「ハッタツソン2022」の参加者や運営チームのみなさまに、参加したきっかけや感想などをハッタツソンフェス2023の中でお話しいただいたのでそのセッションレポートをお届けします。

ハッタツソン2022について

発達障害と共に社会課題解決をめざす共創プログラムとして2022年11月に、QUINTBRIDGEとの共催でリアル会場とオンラインのハイブリット形式で開催。ゲスト講師には、「特性ってなんだろう〜ニューロダイバーシティの視点から考える〜」をテーマに村中直人さん、「ニーズを元にしたアイディア発想と仕組み(ビジネス)の作り方」をテーマに秋元祥治さんに登壇していただきました。

ハッタツソン2022のバナー画像

セッション参加者について

ハッタツソンフェスのセッションでは4名の参加者と3名の運営スタッフの方に出演していただきました。

秋月さん
NTTビジネスソリューションズ株式会社所属、QUINTBRIDGEコミュニティマネージャー。ハッタツソンには、「発達障害」というテーマを初めて知り、新しい世界が知れると思い参加。

大野さん
フリーランス(事業企画・インターネットサービス企画)。2021年からハッタツソンに興味を持ち、今後、障害に関することに向けて自分のキャリアをのばしていきたいという思いもあり参加。

金高さん
株式会社NTTドコモ所属(インフラ構築)。2022年4月のハッタツソンフェスをきっかけに興味をもち、家族に当事者がいて、今後どのような社会を作れたらいいかと考え、参加。

須賀さん
大学生。Twitterで知り、アイディアソンの中で発達障害をテーマとしたものは初めて見たので思い切って参加。

宮地さん(運営チーム)
ハッタツソン2022では撮影・配信機材を担当。ASD、ADHDの当事者かつ当事者の子どもを持つ親でもある。

寺島ヒロさん(運営チーム)
漫画家・デザイナー。時事ドットコム、LITALICO発達ナビにコラムを寄稿。ASD自閉症スペクトラム症の2人の子どもを持ち、自身もASD傾向、睡眠障害などをもつ当事者。

高橋さん(運営チーム)
ハッタツソン2022では、Twitter発信を担当。食品メーカー研究職。ASD、鬱などの二次障害をもつ当事者。

※所属等は開催当時のものです

ハッタツソンに参加されたきっかけ

ー それではみなさんにお伺いしたいのですが、ハッタツソンに参加されたきっかけは何でしたか?

須賀さん:

自分自身も自分の感情を言語化するのがあんまり得意じゃなく、少し生きづらさを感じていました。もし同じような人がいれば、自分の気持ちを伝え合ったり、みんなが生きやすい社会にしていけたらいいなと思って参加しました。

金高さん:

普段は会社員としてインフラの構築などをしています。社内の新規事業開発プログラムに参加した時に、自分がやりたいこと、モヤモヤしてることは何だろうと考える機会があり、その時、やはり家族の発達障害のことが気になっていました。今後、なにか自分ができることはないのかと考えていたんですね。

仕事でハッタツソンフェスに参加されていた寺戸さん(ハッタツソン2019参加者)や大栗さん(mahoraノートを制作する大栗紙工株式会社)とお話をさせてもらったこともあり、すごく興味がありました。それ以外にも、ハッタツソン2022のゲスト講師である、村中先生のニューロダイバーシティゼミで学んでいたり、秋元さんにも社内で講演していただいたり、知ってる人も結構いらっしゃいました。

また、自分として家族のことは知っていますが、それ以外の実際の当事者の方の話を聞く機会をあまり持てていませんでした。まずは考えるにしても、その人たちとお話をさせてもらうというのが自分には足りてないと思ったので、すごくいい機会だと思い参加させてもらいました。

参考記事:
対話を続けて見えた気づきハッタツソンでの出会い|レデマグ

発達障害の視点を取り入れた「mahoraノート」ができるまで|レデマグ

大野さん:

私も身近な人で障害福祉に関わる人がいたので、以前から興味はありました。

とはいえ、障害に関することについてはこれまでやってきてなくて、本やインターネットで調べれば情報は入ってきますが、実際にやるのはまた違ってくるというのは前から思っていたので、参加型のワークショップ的なものがないかな、というのはずっと探していました。

基本的にはTwitterでよく情報を集めているんですけど、医療や福祉、子育て系に寄っていて社会問題を扱うイベントはあんまりないなとずっと思っていました。

そんな時にハッタツソンを見かけ、そういった課題をいかに解決するかというイベントで、自分にとって理想のイベントでしたので、家族に相談する前に参加を即決していました。

秋月さん:

私の場合は「発達障害」という言葉を全く知らない状態でした。QUINTBRIDGEでは、いろいろな企業やスタートアップがイベントを開催されてるんですけど、「発達障害」という自分自身は聞いたことがないテーマでイベントが行われるということで、新しい世界が広がるんじゃないかと思い参加させていただきました。

ー ありがとうございます。それでは運営側のみなさまにも伺ってみたいと思います。

宮地さん:

私はハッタツソン2020に参加者として参加していました。翌年、2021年が企画支援として名前も出さずにお手伝いをさせていただいてました。そして2022年は運営という形で例年、立場をコロコロ変えながら関わらせていただいています。先ほども言ったんですが 自分が当事者だったり、当事者の子どもを持つ親ということが最初の参加のきっかけでした。

2022の裏話としては、私自身はQUINTBRIDGEの会場をTenさんに紹介をして私の役目はもう終わった、と思ってたんですけども。Tenさんから、機材スタッフの手が足りないから入ってくれないかと頼まれて、オファーを受けた次第です。

終わってみれば貴重な経験をいただいたと思っていますので今回も関わらせていただいたことは本当にありがたいと思っています。

寺島ヒロさん:

私のハッタツソンとの出会いというかTenさんとの出会いは、聴覚障害と発達障害の両方持っているくらげさんという方と私が一緒に7年程運営しているnoteの記事があり、そこでTenさんに座談会に来ていただいたのが最初だったと思います。その時から内容に興味を持っていたのですが、今回Twitterで運営側の募集があったので応募しました。

参考記事:

高橋さん:

そもそも私自身17歳の時に ASDと診断され、それまでは一人ぼっちで困り感を抱えているつらい状況でした。でも、大学生、大学院生になっていくうちに、助け合っていきたいなとか、もっと障害を開示して障害の啓発を行っていきたいと思うようになっていき、大学の当事者会を立ち上げたりしていました。そんな時にあるイベントでTenさんと知り合い、そこから当日運営として参加させていただいたのがきっかけになります。

凸凹あるこうカードゲームについて

ー それでは2020年のハッタツソン2020に参加された宮地さんが当時考案された「凸凹あるこうカードゲーム」について 簡単に紹介していただければと思います。

宮地さん:

私は2020年の時に参加者として初めて参加しました。その時は初のオンライン開催ということで、東京のメンバーがいたり、チームでのアイディア出しや開発まではできないかもしれないという難しい現状の中にあり、そこからカードゲームというアイディアに至ったというところがあります。

「凸凹あるこうカードゲーム」について宮地さんが プレゼンをしている画面のスクリーンショット
ハッタツソンフェス2023にて凸凹あるこうカードゲームについて話す宮地さん

このゲームでは発達障害を示す特性を示すような「あるあるカード」とそれを解決するためのヒントになる「こうするカード」 という2種類のカードがあります。このカードゲームは発達障害の自己理解や自己開示、他者を理解する相互理解やカードの特性に対する支援についてのプレゼンをする相互支援の目的を持ったカードで、プレゼンやアイディア出し、または大喜利するようなゲームになっています。

例えば、あるあるカードで「怒りっぽい」というカードを引いた場合、引いた人はその特性を持つ人として「私、怒りっぽいんですよね」とエピソードを話してもらい、みんなに「あるある!」と共感してもらう。

次に参加者の手元にある「こうするカード」の中から、その特性に対する解決策のアイディアを出します。例えばぬいぐるみのカードで「そういう時は、ぬいぐるみを抱いて落ち着いてみたら?」というアイディアを出してもらう。

そういったワークショップ型のカードゲームです。

発案してからは、Ledesoneのハッタツソンのプログラム内で使っていただいたり、各種ワークショップの中で活用いただいたり、面白い経緯をたどっています。まだまだ開発中の段階ですが、今年度中ぐらいには発売したいという気持ちを持っています。

ー ありがとうございます。この「凸凹あるこうカード」は Ledesoneでは主にあるあるカードを使い、当事者と対話をするワークショップなどを開催させていただいています。

参考記事:
QUINTBRIDGEにてハッタツソン体験ワークショップを開催しました!|レデマグ

参加した感想

ー 続きまして参加者の方にハッタツソン2022を実際に参加してみてどうだったかについてお話していただこうと思います。

秋月さん:

先ほど少しお話した通り、「ハッタツソン」や「発達障害」という言葉を全く知らずに参加したので、少し不安がある中での参加でした。当日は当事者の方おひとりと、そうではない方と一緒に3人でチームになり、ワークショップを進めていきました。

発達障害の当事者のお悩みとして「なかなか標準との違いがわからない」というのがありましたが、それがだんだん「どういった違いを生んでるんだろうか」とか 「どこがポイントなのか」が理解していった感じです。

たぶん当日だけだったらなかなか理解が深まらなかったと思いますが、3日間の中で、スライドを作ったりビジネスを考えたり、商品化しようと考えていくにつれて、実は 発達障害は弱点というだけではなく、そこが異なる才能としてイノベーションにつながるんじゃないかという気づきまで至りました。

また、そういった生きづらさは、自分自身もそういったところもあったかもということも思いながら、対話をすることで 理解が深まっていきました。

これからの社会はそういった方々ともうまくイノベーションが起こしていける社会になるのではないかと思えたので飛び込んでみて、すごく世界が開けたことがとても良かったなと思っています。

秋月さんを含む参加チームがプレゼンしている様子の写真
ハッタツソン2022にて秋月さんを含む参加チームが発表を行っている様子

ーありがとうございます。ハッタツソンや発達障害という言葉を全く知らない状況で参加してみてうまく参加できましたか?

そうですね。ゲスト講師による講演などでも聞きなれない言葉もたくさんあったので、最初はちょっとよくわからなかったんですけど、だんだんご本人と関わることで「こういったことがあるんだな」とか自分自身も資料としてまとめる中で考えることで、だんだんと理解が深まり、プログラムの流れに沿ってうまく流れに乗れたんじゃないかという気がしました。

大野さん:

当事者の目線と私の 「親としての当事者」という目線は常々持ってるんですけど、何か問題を解決しようとする時は当事者目線だけだとどうにもうまくいかないなというのはよく思っていました。 第三者目線、客観的にその状況を俯瞰して見る、 広く見てみるということがすごく重要だと思います。

ですので、ハッタツソン2022を通して、客観的に物事を捉える体験が できたというのは非常に大きかったと思っています。

何かを成し遂げようとする時はエネルギーが大事だと思ってて。当事者の方々だったら、怒りのエネルギーが原動力になると思ってるんですね。

でもそれだけだと その怒りを受け取った側の人にあとは任せるという形になってしまって よくない。「なぜやった方がいいのか」をその立場に立ってうまく導いてあげなければ、なるべきものもならないのかなと思っていたので、自分の主観的な意見や同じチームの方々の主観的な意見も踏まえた上で、一歩引いて「じゃあこうするといいよね」というディスカッションができたというところが、非常に面白かったですね。

大野さんを含む参加チームQUINTBRIDGEに映し出されたスクリーンでプレゼンしている様子写真
ハッタツソン2022にて大野さんを含む参加チームがオンラインで発表している様子

金高さん:

我々は参加してみて「曖昧」という言葉というか出来事にスポットを当ててやってたんですけど、日々の中に溢れてる「曖昧」に気付けるようになった。あと、それに対して発信できるようになったというところは変化として残ったかなと思ってます。

自分の中で当たり前と思ってることに対しても「でもこれは本当に当たり前なのか?」みたいな疑問を持てるようになったような 気がします。

私は、講師の村中先生が行っているニューロダイバーシティゼミに参加させてもらってるんですけれども、支援者の方とか保護者の方が多くて、いわゆる当事者の方と一緒に考えたりする 機会はなかったので、今回ハッタツソンの中で感じれることができて、そこがすごく大きかったなと思います。

発達障害という切り口だけではなく本当に多様性というか、自分一人だと当たり前なことが、実は当たり前じゃないよねというところなど、そういう意味では人事の方とかも参加されると面白いのではないかと思いました。

須賀さん:

私も普段は農学を学んでいて、全然発達障害に関する知識はなく、 参加して大丈夫かなと思ったんですけど、ワークショップや村中さんとかの講演で発達障害のことを少し知ることができました。

また当事者の方とも一緒にできるので、発達障害当事者の方が「どういう目線で 生きてるのか」「どういうことを考えているのか」も知りながら解決策を考えることができたすごい希少な機会でしたので、参加して本当に良かったなと思います。

参加者同士が議論している様子写真
ハッタツソン2022にて、金高さんと須賀さんを含む参加チームがディスカッションしている様子

ーありがとうございます。次に運営メンバーの方にも運営目線でのハッタツソン2022についてお聞かせいただければと思います。

高橋さん:

私は運営としてオンラインで参加させていただきました。オンライン参加者の方のお話が面白すぎて、つい自分も参加してしまうというか、共感ポイントがたくさんあって個人的に ずっと頷きっぱなしだったと記憶しています。

また、最初グループ分けをする時にマルチプルインテリジェンスという個性の強弱をチーム分けで使用していたところもすごく面白くて、自身を改めて客観視するきっかけにもなったと思っています。

今後、障害の有無に限らずハッタツソンで生んだものをぜひバズらせたいなと感じました。

寺島ヒロさん:

今回の運営として参加して本当に良かったと思ったのが、ビジネスの現場で実際に今働いていらっしゃる方とお会いできて、そういう方々の振る舞いや言葉遣いを垣間見れたのが、面白かったことです。

どちらかというと私は普段は自分一人で仕事をするような仕事ですし、周りの人も子どもや子どもの知り合いなので、私は発達障害の人たちの間で暮らしてることが多い。でも、今回そういう普段一緒にいない方々と 一緒にお話ができてすごく学びが深まったなと思いました。

普段は仕事をしている方の間に一人だけ発達障害の方がいるという状態で働くことが多いと思うので、そういうところで発達障害の当事者の方たちが何を感じるかということについて、普段はあまり考えていなかったかもしれないところに気づかされました。

そのあとコラムや漫画など、自分が制作する上で、随分と反映できるようになったと思っております。このような機会を与えていただいてありがとうございます。

宮地:

運営としての目線で2022を振り返ると、当日の各チームの動きを客観的に見られたことが一番良かったと思っています。

当事者の声のヒアリングや共感、アイディア出しの苦しみの部分、発表資料の作り込みなどなど自分が参加者だった頃と比較して俯瞰して見れたというところは良かったなと思います。

ーありがとうございました。

■まとめ

ハッタツソン2022は参加者の皆さまと運営の皆さまのご協力の元、開催することができました。

これからもハッタツソンのプログラムの開催を通じて「ひとりひとりが過ごしやすい社会をともにつくる場づくり」をしていくことができればと思っておりますので引き続きハッタツソンもよろしくお願いします。

今回の会場について

NTT西日本のオープンイノベーション施設『QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)』とは

QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)は、NTT西日本が運営するオープンイノベーション施設です。

企業・スタートアップ・自治体・大学などが自由に交流し、それぞれの思いやアセットを共有しながら共創を進め、実社会での活用をめざします。

会員とともに社会課題の解決と未来社会の創造を成し遂げ、ウェルビーイングが実感できる社会を実現することを目的としています。

QUINTBRIDGEの外観写真