「合理的配慮」から「共感」へ:電通デジタルがLedesoneと拓く、新しいアクセシビリティのカタチとは

⚫️取り組み内容
- 社内向けのアクセシビリティ座談会(勉強会)
- ウェブアクセシビリティの向上のための発達障害当事者によるユーザビリティ調査
- DEI推進チームが担当するランチタイムセッション
⚫️取り組みの効果
- ウェブアクセシビリティに真摯に取り組んでいる姿勢を社内外に発信できた
- 新規サービスとしての事業拡大の可能性が増えた
電通グループの一員で、国内最大級の総合デジタルファームとして知られる株式会社電通デジタル。デジタルマーケティング領域において、幅広いサービスを提供し、クライアント企業のデジタル変革を支援しています。
Ledesone(レデソン)は、2024年3月に株式会社電通デジタルと業務提携を行い、これまでに社内向けのアクセシビリティ座談会(勉強会)、ウェブユーザビリティ調査、DEI推進チームが担当するランチタイムセッションなど、さまざまな取り組みを行ってきました。
参考
そこで今回、株式会社電通デジタル オウンドメディア第1事業部 第5グループ グループマネージャーでウェブアクセシビリティコンサルタントの千葉 順子さんにLedesoneと取り組みを始めたきっかけや、その効果についてお話をお聞きしました。
障害や診断名ではなく、「見えづらい困りごとがある」という視点で考える
Ten:それではまず、千葉さんが弊社を知ったきっかけについてお伺いさせてください。
千葉:弊社ではウェブアクセシビリティ診断をはじめとするコンサルティングサービスを行っておりますが、単にガイドラインの基準を満たしているかいないかだけではなく、当事者の方が本当にウェブサイトを使えるか、使いやすいのかの視点を重視しています。
そのためにも当事者の声を聞くことを大切にしているのですが、2023年から弊社と協業しているインフォアクシアの植木さんから発達障害について理解するのであれば、困りごとを起点にその課題解決に取り組んでいるLedesoneさんがいいよ、とご紹介いただいたのが始まりです。
参考
Ten:ありがとうございます。植木さんからのご紹介をきっかけとして、電通デジタルさんと弊社で業務提携を結ぶことになりましたが、弊社のどんなところに魅力を感じていただけたのでしょうか?
千葉:Ledesoneさんがハッタツソンなどの活動を通じて発達障害当事者の方々と様々な取り組みを行っていたことやすでに他企業との取り組みを行っていたことも魅力の一つでしたが、一番の決め手は「見えづらい困りごと」を起点に課題解決を考えるという視点です。
障害を起点に考えてしまうと、自分には関係ないと思われてしまうことがあり、視野が狭くとらえられがちなのですが、困りごとを起点にすると障害のあるなしに関わらず多くの人が自分ごととして捉えやすいため、アプローチとして非常にわかりやすいと感じました。
Ledesoneさんのように「こんな困りごとがある人がいます」という、特性への理解を深めることから取り組みを始めることは、より自然な関係性の構築に繋がるのではないかと感じました。
Ten:ありがとうございます。まさにLedesoneとしては「障害・病名起点ではなく困りごとを起点に考える」ということを大事にしているので、その点に共感いただけてとても嬉しいです!
会社として本気で取り組んでいる姿勢を社内外で評価してもらえた
Ten:Ledesoneとの業務提携を進めていくにあたり、懸念や不安はありましたか?
千葉:会社としても積極的に取り組んでいきたい領域だったので、否定的な意見はありませんでした。協業先に関しては企業規模は関係なく、丁寧に真摯に取り組んでいるという中身のほうが大事だと考えています。Ledesoneのように発達障害の当事者のユーザビリティ調査をしたり、新商品の開発のワークショップをする会社は他にないと思います。
また、すでにコクヨさんなどの大手企業と取り組まれていた事例もありましたので、取り組みがイメージしやすく、なにかを心配したり懸念したりすることは、あまりありませんでしたね。
Ten:Ledesoneとの取り組みによって得られたことや成果などは、具体的にどんなものがありますか?
千葉:私たちのようにウェブアクセシビリティ診断を行っている企業で、診断以外にもさまざまな当事者と取り組みを行っている企業というのは、あまり多くないのではないかと思います。そのため、Ledesoneさんとの取り組みによって、「当事者の声を大切にして取り組みを行っている」ということがしっかり伝わったのではないかと思います。
自社サイトに掲載した記事を見てくれた企業から「いろいろやってるんですね」とか「気になる」と言っていただくことが増えてきました。ウェブアクセシビリティ診断だけではなく、当事者とともにしっかりと取り組んでいることを知ってもらえたことで、「弊社もいずれ一緒にやりたいです」という声も頂いています。
また社内でも、発達障害に興味を持っていた社員が積極的に勉強会に参加してくれるようになったり、ランチタイムセッションを見てくれたりしています。以前は関心があっても一歩を踏み出せなかった人たちが、今回の取り組みをきっかけとして、自ら学びを深めようとしている姿を見かけます。
Ten:皆さんと一緒にランチタイムセッションをやったことで、御社社内に発達障害に関心が高い人が想像していた以上に多いことがわかりました。
特に子育てをしていると気になることがたくさんあるようですね。ランチタイムセッションの際には本当に忌憚なく、当事者の話はもちろん、発達障害を持つ子どもを育てる親目線でのお話など、いろいろなお話を聞かせていただいたことが印象的でした。

千葉:Ledesoneさんとの取り組みとして最初に行った座談会(勉強会)に参加してくれた社員の中には以前からモヤモヤした思いを抱えていた方もいたようで、勉強会でお話を伺って「もっと話を聞いてみたい」と思ったと言っていました。そこでもう少し幅広くお話を伺うためにランチタイムセッションを行うことにしましたが、そこでは業務から少し離れた親目線、子供目線のお話がきけたことがとても良かったと思います。
こういった取り組みひとつひとつが、われわれの知見を深めることにつながっており、業務にもいい影響を与えているとともに、弊社がアクセシビリティについて真摯に取り組んでいるという認知を広めることに非常に寄与しているなと感じています。
Ten:具体的に問い合わせ内容に変化がありましたか?
千葉:はい、ありました。当事者の方々との取り組みは他社にはないサービスなので話を聞かせてほしいというお問い合わせがあったのはとても嬉しかったです。
今後のLedesoneに期待すること
Ten:Ledesoneと一緒にいろいろな取り組みを行っていただきましたが「ここが良かった」という点はありますか?
千葉:すごく良かったと感じていることは、相談した際にいろいろなご提案をいただけるところです。こちらの希望をくみ取って提案いただくだけではなく、「こんなアプローチはどうですか?」とわれわれがイメージしている以上のご提案いただけるのはすごくありがたいですし、良い点だと思っています。
Ten:ありがとうございます。反対に、Ledesoneの改善して欲しい点やご要望などはありますか?
千葉:そうですね。改善点というよりは要望なのですが、ユーザーテストのモニターの人数をもっと増やせたらいいのではないかと思いました。特性は人の数だけあるということを昨年の取り組みを通じて痛感したので、できるだけいろいろなモニターの方々のお話をたくさん聞けると、より深い気づきを得られるのではないかと思っています。例えば、企業側のニーズに合わせてさまざまな背景を持つ方にご協力いただけると、より多角的な視点からサービスを評価できるようになるのではないかと思います。
Ten:2024年4月に合理的配慮が義務化されたこともきっかけとしてあるのかと思いますが、世間の関心も高まってきていますよね。
千葉:確かに、世間で大きく取り上げられるような話題ではありませんが、多くの企業が内部でこの取り組みを進めています。これからはより、このような取り組みのニーズも増えていくのではないかと思います。
そして、多くの企業がアクセシビリティに関心を抱いている一方で、具体的な取り組み方について悩んでいるケースも多くあります。そこで、当社では今回のユーザビリティ調査の結果をまとめた記事を作成し、そうした課題を抱えている企業にアプローチしていきたいと考えています。
Ten:今後、Ledesoneと一緒にどんなことを行いたいと考えていらっしゃいますか?
千葉:ぜひ、これからもどんどんアクセシビリティの向上に役立つことを一緒に行っていきたいと考えています。
当事者の方々から得られる知見は、非常に貴重だと考えています。Ledesoneとの取り組みで得られた示唆を体系化し、広く発信していきたいです。そうした発信活動も、これから一緒に取り組んでいければうれしいですね。
Ledesone(レデソン)は、インクルーシブデザインの視点を活用し、クライアント企業の製品開発、サービス改善、組織開発をインクルーシブパートナーとして支援します。
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