ユーザーの声が形作る、新しい製品開発-牛乳石鹸共進社株式会社の『SUSUGU』開発を通して気づいたモノづくりの未来

牛乳石鹸の商品の前で並ぶ二人の男性の写真。

⚫️取り組み内容

  • ユーザー訪問調査(3回)
  • 座談会(リアル&オンライン)
  • 調査結果のマーケティング資料作成

⚫️取り組みの効果

  • Ledesoneからの提案によって対象者層の視点が広がった。
  • プロダクトの課題や製品の改良という点だけでなく、「ユーザーにどう伝えると理解されすいか」という視点を得られた。
  • インクルーシブデザインの考え方が取り入れられたわかりやすいマーケティング資料で社内議論がスムーズに進んだ。

牛乳石鹸共進社株式会社は、牛のマークの「カウブランド赤箱」で知られる1909年創業の老舗トイレタリー企業。ボディソープ、シャンプー、入浴剤なども販売しており、日本全国の家庭で長年親しまれてきました。「ずっと変わらぬやさしさを。」をスローガンに、肌に優しい天然由来成分を配合した商品を数多く展開しています。

Ledesoneが開発のお手伝いに携わっている『YUAGARI』プロジェクトは、被災時の水不足の際にも清潔を届けたいという思いで始まりました。そしてさらに、平時でもこういった製品を利用してもらえる人がいるのでは?という気づきから、介護現場や医療現場など、さまざまな場面での使用を検討し始めました。

そのような中、Ledesoneは、対象者の方に実際に使っていただくユーザビリティ調査をサポートさせていただきました。この取り組みを通して、社内外で起こった変化について、また、Ledesoneと取り組みを始めたきっかけについて牛乳石鹸共進社株式会社新規事業室 室長 江越 亮一さん<写真左>、山岡秀子さん、大形 広太郎さん<写真右>にお話を伺いました。

インクルーシブデザインへの挑戦とLedesoneとの出会い

Ten:今回、Ledesoneは少ない水で洗髪を可能にする『SUSUGU』開発のお手伝いをさせていただきました。最初に、Ledesoneを知っていただいたきっかけをお伺いできますか?

牛乳石鹸_大形:インクルーシブデザインという枠組みで情報収集していくうちに、Ledesone主催のワークショップを見つけ、参加させていただきました。1回目は発達障害、2回目は認知症がテーマでした。その時に初めて、Tenさんとお話しさせていただきました。

当時はSUSUGUを、「自分自身がお風呂に入れない時などに使う想定での検証」を進めていましたが、「体が不自由でお風呂に入れない人に対して『やってあげる』検証」が必要だと考えていた頃でした。それについてTenさんに相談させていただいたところ、Ledesoneとしてお手伝いしていただけるというお話があり、社内に持ち帰り、検討したという流れですね。

Ten:インクルーシブデザインに取り組むうえで、難しかった点はありますか?

牛乳石鹸_山岡:ひと言で「インクルーシブデザイン」といっても対象者はさまざまです。当時はこういったリサーチを自分たちだけで進めていくには、スキルもノウハウも足りていませんでした。

例えば、外部事業者に依頼することで専門的な支援を受けることは可能ですが、本格的な取り組みとなると、高額な費用が伴います。逆に予算を抑えようとすると、実施内容を大幅に絞らざるを得ないケースも少なくありません。そのため、なかなか踏み出すことができずにいました。

その点、Ledesoneは手が届く範囲で、仮に試みがうまくいかなかったとしても経験値としてデータが得られるから大丈夫と思えるスタンスと価格感で協力いただけたので、少しずつ段階的にスタートできるのではないかと考えました。

Ten:ありがとうございます。「費用」や「その効果」のハードルをクリアして共に進行を考えられる先としてLedesoneを選んでいただきとてもうれしいです。

Ledesoneと提携する前に比較されたサービスなどはありましたか?

牛乳石鹸_山岡:一度、別の調査会社に相談したことはありますが、モニターがたくさんいらっしゃる分、どんな人が回答しているのかが見えづらいという課題がありました。「本当にこちらが期待しているユーザーが回答してくれているのか」という不安がある中で、大きな費用をかけることは難しい。でも、自分たちではどう探していいかわからない…という状況でした。

Ten:Ledesoneはリアルな生活者としてのユーザーの声を拾えると感じていただけましたか?

牛乳石鹸_山岡:はい。Ledesoneのネットワークから適した方に声をかけていただけるのが良かったです。こちらの希望にマッチした方を責任もって選定していただいているということがよくわかりました。対象の方にも「自分たちの声が役立つなら」という前向きな気持ちで参加していただけたのもうれしかったです。

特に、まだ具体的な顧客のニーズや課題がわからない中で、一緒に考えながら進めていただけたのがすごくありがたかったです。こちらからの依頼だけではなく、より良い結果が出せるようなご提案をいただいたり、また、状況がさまざまに変化する中で柔軟に進めてもらえたのも非常に良かったと思います。実はそうやって対応してもらえるところを探すのは本当に難しいんですよ。

Ten:ありがとうございます。Ledesoneを選んだ決め手やポイントはどこでしたか?

 牛乳石鹸_江越:大形さんがワークショップに参加した経緯があったのが大きかったです。やはり人となりを知っているというのは、大きな魅力ですよね。実施にあたってはもともと、会社全体でインクルーシブデザインについての関心は高かったですし、社内での理解もスムーズだったと思います。

牛乳石鹸_大形:私たちの考えた対象者は、「自分で使う人」ではなく「人にやってあげる人(介護者)」でした。当事者だけでなく介護者のネットワークも持つLedesoneさんとの出会いは非常にタイムリーでしたね。

Ten:一般の人も参加できるワークショップやイベントでLedesoneの雰囲気や取り組みを知っていただいていたのが良かったのかもしれないですね。あらためてイベントを続けていく大切さに気づかせていただきました。

ユーザーとの共創が生み出す、製品の進化

Ten:今回、1回目の訪問調査の後、コミュニティの座談会や2回の調査を行いましたが、継続的にご依頼いただけた理由があれば教えてください。

牛乳石鹸_江越:率直に、最初に使っていただいた方に、再度使ってみてほしいと思ったんです。訪問調査で、どんな環境で使用されているのかや、介助のやり方など、リアルな現場を直接見ることができたことは、非常に学びが大きかったと思います。もちろん、開発者が目の前にいるので本音を話しにくいという懸念はありますが、実際に使用しているところや、介助の課題などを肌で感じることができました。

ただ、それだけではやはり開発としては偏ってしまうので、多くの人の意見を聞くことも必要です。そのために複数で、わいわいしゃべりながら意見を聞く座談会も開催していただきました。特に、モニターさんも家族の方も「できることがあれば、やりますよ」とすごく前向きにチャレンジしてくれてうれしかったですね。

牛乳石鹸_山岡:Ledesoneとモニターの間に信頼関係があるので「調査会社に調査される」というような意識が少ないと感じましたし、その分、しっかりと意見を言ってもらえたのも良かったです。

牛乳石鹸_江越:モニターレポートもしっかりと仕上げていただき、非常に助かりました。マーケティングの視点で仮説を立てていただけたのもありがたかったです。

牛乳石鹸_大形:チーム内ではお互いの考え方の主張がぶつかって、こじれてしまうことがあります。ですが、Ledesoneがまとめてくれることで「○○をどう議論しようか」と話が進みやすくなるのがすごく良かったです。客観的にまとめていただけるからこそ、論点が明確になったと思います。

牛乳石鹸_山岡:そうなんです、レポート一つにしても、どうまとめていいかもよく分からなかった中で、質の高いレポートをいただけてとても勉強になりました。いろいろとアイデアも出してくれるし、しっかりとコミュニケーションをとりながら進められたのが一番良かったと思います。

Ten:今回、障害のある方や実際に介護をされている方と接してリアルな体験をされたことで、新たな気づきなどはありましたか。

牛乳石鹸_江越:ご依頼した当初は、「高齢者の在宅介護」だけの枠組みで検証を考えていたのですが、Tenさんから「洗髪ケアは若い方にもニーズが高いですよ」というお話をいただいて、医療ケア児の介護にも対象を広げることができました。これはまさしく、Ledesoneと一緒に取り組んだからこそ得られた気づきでした。

牛乳石鹸_山岡:先ほどもお話に出ましたが、もともと考えていたプロダクトの課題や製品の改良という点だけでなく、「その人たちにはどう伝えるとわかりやすいのか」という視点をいただけたことです。コミュニケーションもプロダクトの一部として非常に大切だということに、あらためて気づきましたし、とても勉強させていただきました。

牛乳石鹸_江越:調査で見せるコンセプトシートも、対象者の方がわかりやすいようにアレンジしてくれたり、障害のある方に関わるインタビューという視点から調査内容やまとめにインクルーシブを反映させてくれたり、本当に細やかなサポートがありがたかったです。

実際に提供した調査レポートを元に作成したサンプル画像

谷村:レポートの面でもお役に立てて良かったです!今回のLedesoneとの取り組みで良かった点を教えてください。

牛乳石鹸_江越:良い点はフットワークが軽いところ。自転車で来てくれるくらいのスピード感で(笑)。あと、単に費用を払って、オーダーに対して返して…といった関係性じゃないと感じています。一緒にプロダクトを作る仲間として、どのようにしたら良い製品になるのかを一緒になって考えていただけるのが良かったです。

Ten:ありがとうございます。障害のある方や高齢者の声を活かして、事業開発する上での課題や得られたことはありますか?他部書や社外のプロジェクトの方と一緒に進める上での工夫や気づきがあれば教えてください。

牛乳石鹸_江越:今回、他部署の研究所の人にもインタビューに参加してもらったのは非常に良かったと思います。研究者自身が自ら現場に行くことはあまりありません。ましてや、実際の医療ケアをされてるお子さんの親御さんと研究員がやりとりする機会なんて、なかなかない気がするんですよね。現場を見ているので、こちらが作ってほしい理由を言うまでもなく、すぐに理解してもらえることも増えました。

調査の結果を客観的に観ることも大切ですが、現場に行ってユーザーと直接接することで、その人の困りごとをより身近に感じることができますよね。こちらがオーダーしていないことも汲み取って開発に反映してくれたりなど、すごく良い効果があったと思います。

インクルーシブデザインをさらに深化させるための取り組み

Ten:最後の質問ですが、今後のLedesoneに期待するところをお聞きしたいと思います。今後、こういう提案や情報がほしいなどでも構いません。

牛乳石鹸_山岡:直近だと、SUSUGUのマーケティングの導入についても考えてもらいたいですね。今後、販売のターゲットを決めて、どう売っていくのかを詰めていくのでサポートしてもらえればありがたいです。

牛乳石鹸_江越:今後は製品としてだけでなく、販売戦略としてどう動くかということになってきます。今後はユーザーヒアリングよりは、認知拡大や使用方法などの発信ができればと考えています。

今はモニターインタビューにご協力いただいていますが、今後は使った感想を周りに伝えていくために何をしたらよいかなど、そういう点での発展性をお願いしていきたいと思います。例えば、コミュニティで情報を得る人も多いので、コミュニティ内での認知拡大をお願いしたり、薬局と連携して取扱店舗などを発信したりなどを考えていますが、その他のご提案などをいただきたいですね。

できれば、今回の調査結果を活かして、具体的な次のアクションプランを一緒に考えていただきたいです。これまでの経緯をすべて理解してくれているからこそ、私たちが何をしたいのか、どこで悩んでいるのかをいちいち説明する必要がないのは、大きな強みです。Ledesoneの専門知識を、私たちのプロジェクトに活かしていただいて、これからも共にプロジェクトに関わっていってもらいたいと考えています。

谷村:ありがとうございます。私たちもリサーチは一つの手段であって最終的にはそれを必要とする人に、必要とされるものを届けるところまで行いたいと考えています。ぜひ、お付き合いさせていただきたいです。

男性二人と女性一人がテーブルを囲んで打ち合わせしている様子
奥:牛乳石鹸江越さま 手前:牛乳石鹸大形さま 右:Ledesone谷村

牛乳石鹸_江越:医療や介護の分野は複雑な課題を抱えており、解決すべき問題は山積しています。しかし私たちとしては、そこだけにとどまらず、企業の成長戦略として新たな領域に事業を広げることのできる可能性のあるプロジェクトとなることを目指しています。「介護専門」と限定的に位置づけるのではなく、幅広い層のニーズに応えられるような汎用性の高い製品として展開していく予定です。

今はまだ、使い方を横でご説明したり、説明書を読んでもらったりしていますが、今後はより直感的に使えるように開発していきたいですね。また、実際に製品をご利用いただいたモニターの方々の生の声を積極的に発信することで、困っている人のもとへ届けていきたいと思っています。

Ten:同様の思いを、ハッタツソンフェスを通じて私もすごく感じています。

ハッタツソンフェスに登壇いただいたとある企業の方も、同じようなお話をされていました。「自社で開発した製品について、企業側が発信してもなかなか伝わりにくい。しかし、ハッタツソンフェスで当事者と一緒に発信することで、その製品の必要性や便利さが社外の人にも伝わるし、さらに社内の人にとっても理解しやすくなるんです。」とおっしゃっていて、その時も「なるほど!」と思いました。

今回、江越さんにもそう言っていただき、ますます利用した方からの発信は大切だと実感しました。そんなふうに実際に利用した当事者の人と一緒になって発信できるコンテンツを作っていくことにも、ぜひ挑戦していきたいと思います。

これからも引き続きどうぞよろしくお願いします!

このインタビューの後、YUAGARIプロジェクトで開発された製品は、服を着たまま洗髪できる、ポータブル洗髪デバイスセット「SUSUGU(ススグ)」として、正式にプレスリリースされました!


Ledesone(レデソン)は、インクルーシブデザインの視点を活用し、クライアント企業の製品開発、サービス改善、組織開発をインクルーシブパートナーとして支援します。